相続放棄しても簡単に縁切りするのは難しい理由
困った親族がいる、遺産の中に借金があるので巻き込まれたくない。いろいろな理由で相続をきっかけに縁切りを考える人は多くいます。しかし相続放棄をしたからといって、簡単に縁切りできる訳ではありません。その理由を解説します。
縁切りしたいなら相続放棄?
親子親族の関係であっても、断絶状態だというのは珍しくありません。仲良くすることが理想とはいえ、やはりそれぞれに事情があるのです。しかし現在の日本の法律では「縁を切る」という制度はありません。どれだけ仲が悪く長い間会っていなかったとしても、法律的には親子であり親族なのです。そのため、遺言書が残っていない場合、突然相続の連絡が届くことがあります。
もう関係を持ちたくないし連絡もしてほしくないという理由で、相続放棄を選択する人も多いです。相続放棄を行うと最初から相続人でなかった扱いになるので、遺産分割協議に参加する必要もなくなります。しかしそれですべてが解決する訳ではありません。
不動産を管理して引き継ぐ義務
相続放棄をしても縁切りができない理由。それは不動産の管理義務があるからです。
例え相続放棄をしたとしても、自分の次に不動産の管理をする人を見つけるまでは、自分が管理をしなければならないのです。雑草の手入れも必要ですし、傷んだ箇所については修復して周囲に迷惑をかけないようにしなければなりません。近隣住民に万が一損害を与えてしまった場合、損害賠償を支払う必要も生じます。
それならばいっそ売却してしまおうと考えるかもしれませんが、相続放棄をしているので売却したり取り壊したりすることはできません。つまり自分のものではない不動産を、自分の持ち物と同等の注意力を持って管理しなければならないのです。
相続したほうが簡単な場合も!
自分の次に相続人となる者がいない場合に相続財産の管理義務から逃れるためには、家庭裁判所に申し立てて相続財産管理人を選任してもらい、その人に不動産を管理してもらう必要があります。しかし相続財産管理人の選任には費用がかかります。特に相続財産管理人の報酬や経費のために支払う予納金が高額になるケースが多く、かなりの負担になってしまうの、今後相続不動産の管理義務を継続する負担や場合によっては損害賠償請求をされるリスク等を考えて相続財産管理人選任の申立てを検討することが望ましいでしょう。
相続放棄をしたとしても、管理義務からは逃れることができません。それならばいっそ相続してしまった方が簡単なケースも多いです。相続すればその不動産は自分のものになるので、売却や取り壊しが可能になるからです。管理人を置く必要もなく、財産を処分することができます。相続開始後、早急に相続登記をして、不動産を売却できれば固定資産税の負担やその他のリスクをなくすことができます。
縁切りを優先するなら相続もアリ
相続放棄をしたとしても、それで縁が切れる訳ではありません。特に自分以外に相続人がいない場合は、相続がかえって縁切りの近道になることもあります。近付きたくないと思っても周囲に目を配って、計画的に行動することが大切です。
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