遺言書の作成

財産を特定の人に遺したい、あの子には継がせたくないなどの希望を遺された家族に伝えるのが遺言です。

遺言は、財産がある方に限らず、財産がなくても、遺された家族があなたの形見や遺品類の所有を巡って争いにならないようにするためにもなされます。

今まで仲が良かった兄弟が、遺言がなかったために、不仲となり調停や裁判になるケースも多くあります。このようなことにならないために、遺言という形であなたの遺志を伝えることが大切です。

遺言を書いておいた方が良いケース

「たいした財産も無いし、私の場合、遺言って本当に必要なの?」そうおっしゃる方も多いのですが、実際には、ここ数年、遺言書の有用性に気づいて、遺言書を書く方が、ますます増えています。

公正証書により作成された遺言書の数は、昭和41年には7,767件しかありませんでした。しかし、平成28年は、105,350件にまで急増しています。なんと約14倍にもなっており、今後も急増していくのは間違いないと予想されます(過去10年間では約1.4倍)。

また、この件数は、あくまでも公正証書遺言のみの件数です。そのため、自筆証書遺言などを含めれば、実際に遺言を作成している人は、もっと多くなります。自筆証書遺言の作成数は不明ですが、家裁が検認した公正証書以外の遺言の数は平成26年で16,843件と、過去10年間では約1.5倍(過去5年間では約1.2倍)となっております。

65歳以上の人が遺言を書くと仮定しますと、1,000人に3人の割合で遺言を作成しているという計算になります。

下に、遺言が書いておいた方がよいと思われる代表的なケースをあげてみました。意外にも、ご自分にあてはまるケースが、あるのではないでしょうか?

夫婦の間に子どもがいない

たとえば、夫が亡くなった場合には、妻とともに、夫の父母、または夫の兄弟姉妹が相続人になります。遺言がないと、妻に全部の財産を残すことができません。 場合によっては、妻が住む家を失うこともあります。「妻に全部の財産を相続させます。」という遺言を書いておけば、安心です。

財産の大部分が自宅などの不動産である

自宅の土地建物以外には、たいした財産もないし、遺言なんて大げさな……こんなふうに言われる方が多いのですが、実はこのような場合にこそ、遺言を書いておく必要があるのです。不動産は、現金や株式などと違って、簡単に分けることができません。相続トラブルの中でも最も多いのが、不動産をめぐる争いなのです。トラブルを防ぐために、遺言を書いておいてください。

お世話になった友人など、相続人以外にも財産を残したい

お世話になった友人や老後の面倒をみてくれた方、内縁の配偶者、長年よく尽くしてくれた息子の嫁など、相続人ではない方に、財産を残したい場合には、遺言で財産を遺贈することができます。

長年連れ添ったパートナーがいるが婚姻をしていない

相続人になることができるのは、法律上の配偶者だけです。 このままでは、パートナーは遺産を相続できることができません。遺言でパートナーに財産を遺贈する、と書いておけば安心でしょう。

事業を継ぐ長男に、事業用の財産を相続させたい

長男以外の兄弟姉妹にも相続権がありますので、長男が事業用の財産を相続できるとは限りません。事業用の財産を相続できなかったばかりに、事業を継続することが困難になる場合もあります。遺言で長男に指定しておけば、安心です。

暴力をふるう息子に財産を譲りたくない

暴力をふるうようなドラ息子にもほかの相続人と同じように相続する権利があります。 遺言では非行のある相続人の相続権を奪うことができます。

相続人がいないので遺産を社会のために役立てたい

「おひとりさま」といわれる単身者の方々は、高齢者の1割を超えています。 財産を受け継ぐ親族が、だれもいない場合は国庫へ帰属してしまいます。希望通りに遺産を残したいと思うのであれば、遺言を書いておきましょう。子どもに残すだけが相続ではありません。実際、寄付や遺贈での社会貢献が、ここ10年ほど非常に増えてきています。