相続

事実婚でも借金を相続することになるのか?

民法では誰が相続人になるのかを定めています。配偶者は必ず相続人になりますが、ここで気になるのは事実婚の場合です。正式に結婚していなくても、借金を相続することになってしまうのでしょうか。事実婚と相続の関係について確認しておきましょう。

 

事実婚の定義

結婚に対する価値観やライフスタイルの変化によって、近年増えていると言われている事実婚。事実婚とは、婚姻届を提出していないものの、事実上法律婚した夫婦と同等に扱われる関係のことを言います。

3年以上同棲すれば事実婚、と言われることが多いですが、同棲期間の長さだけが要件ではありません。大切なのはお互いに婚姻の意思を持っているかどうか、という点です。この他にも共同生活を送っているか、住民票で同一世帯にあるか、親族や職場の人など周囲の人間から夫婦として扱われているかなど、いろいろな条件を満たすことで、事実婚だと認められることになるのです。

 

事実婚では相続権がない

事実婚の夫婦は、法律婚の夫婦とほぼ同じ権利や義務を有しています。しかし法定相続人になることはできません。何十年と連れ添った夫婦であっても、婚姻届を出していないのであれば相続権はないのです。そのため、本人の借金を代わりに背負うこともありません。

法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。法定相続人で最も有利なのは配偶者ですが、配偶者とは婚姻届を出すことで法律上認められた妻または夫の事を指します。

親が事実婚であっても、子供は法定相続人になることができます。血縁関係があるからです。ただし父親が子供を認知する必要があります。

 

事実婚での相続に関する注意点

事実婚の場合、亡くなった本人の妻や夫は法定相続人になれません。しかし遺産を受け取る手段がない訳ではありません。遺言書があればいいのです。遺言書は、遺産の分け方に関して故人の意思を表すものですから、そこに遺産を分ける旨が書き記されていれば、事実婚であっても遺産を受け取ることができるのです。ただし遺言書はいくつかの条件を満たしていなければ法的に有効とならないので、トラブルを避けるためにも適切な内容のものを残しておく必要があります。

法定相続人がおらず、遺言書も残っていない場合、亡くなった人の財産は国庫に帰属することになります。しかし一定の場合、事実婚の妻あるいは夫が特別縁故者と認められて相続を受ける権利が発生します。最初から諦めてしまうのではなく、自分が該当するか調べることが大切です。

 

事実婚は相続以外の権利関係に気をつけて

事実婚の場合は、相続に関する権利義務はもちろんのこと、その他の権利関係についても注意する必要があります。例えば遺族年金は原則受け取ることができませんが、要件を満たしていれば支給される可能性は残っています。最初から諦めるのではなく、一度専門家に相談するようにしましょう。