相続登記

相続登記の必要書類とは

不動産の所有者に相続が発生して、相続を原因とする所有権移転登記を申請する際には、どのような書類を準備しなければならないのでしょうか。たとえば、法定相続人全員で共有名義とする場合と、遺産分割協議によって相続人のうち一人のみが名義を取得する場合とで、準備しなければならない書類は異なるのでしょうか。

 

相続登記に印鑑証明書は必要か?

 

相続登記には印鑑証明書が必要な場合とそうでない場合とがあります。法定相続人がそもそも一人のみの場合や、法定相続分どおりの共有名義とする場合には、印鑑証明書は不要です。他にも、相続人のうちの一人に相続させる旨の遺言があるような場合にも、印鑑証明書は不要となります。一方で、不動産につき相続人の全員で遺産分割協議をし、相続人のうちの一部の方が名義人となるような場合には、名義人となる者以外の相続人全員の印鑑証明書が必要となります。この場合においては、相続人全員が実印を押印した遺産分割協議書が相続登記の際に必要になるからです。

 

相続による所有権移転登記の特殊性とは

 

不動産登記の手続きにおいて重要な原則の一つに、「共同申請主義」というものがあります。この共同申請主義は、所有権移転登記によって、名義を失うという不利益を受ける現在の名義人を登記申請に関与させることによって、登記の真実性を確保するための制度であると言われています。しかし、この共同申請主義には例外があります。相続登記の場合には、名義を失う被相続人はすでに亡くなっているので、登記を申請をすることができません。したがって、相続登記は、新たに名義を取得する者のみが、単独で所有権移転登記を申請することができるのです。では、共同申請においてはその登記によって不利益を受ける者が関与することで登記の真実性を確保していましたが、単独申請の場合はどうでしょうか。法定相続分どおりの相続登記の場合は、国の機関が発行した公文書である戸籍謄本を提出しますから、これによって登記の真実性は確保されているといえます。また、遺産分割協議によって、相続人のうち名義を取得しない者がいる場合は、この者の印鑑証明書という公文書の提出を求めることで間違った登記がなされないような制度になっているのです。

 

相続不動産を売却する場合は印鑑証明書が必要

 

相続登記を終えて、相続不動産を売却する際には、買主への所有権移転登記が必要になります。この場合は、原則どおり、登記は共同申請ですので、相続登記で登記名義を取得した売主が登記申請に関与する必要があります。売主が登記名義人本人であるということは、相続登記の際に法務局から発行された登記識別情報によって証明はできますが、不動産の所有権という大事な権利の得喪に関わる問題ですから、さらに売主には、申請書(登記申請を司法書士に委任する場合は委任状)に実印の押印と、発行から3ヶ月以内の印鑑証明書の提出が求められます。これによって、登記の真実性はより強固なものなります。

 

不動産登記における印鑑証明書

 

以上のように、不動産登記の手続きにおいて、印鑑証明書の提出が求められる理由は、相続人全員の意思に合致していない間違った登記や、名義人本人でない者からの登記申請を防ぐ必要があるからです。登記の手続きの内容によっては、発行から3ヶ月以内の印鑑証明書が必要となる場合もあるので、十分な準備をして、登記申請に臨みましょう。