相続放棄

市役所で相続放棄の手続きはできる?依頼可能な内容を解説

相続が発生した際、「市役所で相続放棄の手続きができるのでは?」と考える人は多いです。しかし実際には、相続放棄の申述は家庭裁判所で行う必要があります。一方で、市役所では戸籍謄本の取得や相談窓口の利用など、一部のサポートを受けることが可能です。
そこで今回は、市役所でできること・できないことを明確に解説し、相続放棄の正しい流れを紹介します。

目次

市役所で相続放棄の手続きはできる?

相続放棄の手続きは市役所でできない

必要書類の取得は市役所で行う

相続放棄の相談は市役所でもできる

相続放棄をする場合の一般的な流れ

必要書類を市役所で取得する

裁判所で相続放棄の申述を行う

相続放棄後の注意点

市役所で相続放棄を相談するメリット

必要書類の案内を受けられる

手続き全体の流れが分かる

無料で相談できる

他の手続きも同時に確認できる

市役所で相続放棄を相談するデメリット

専門的な法律相談はできない

書類取得以外の支援は限られる

待ち時間や手続きが混雑する場合がある

相続放棄後に市役所から届く可能性のある書類について

固定資産税・都市計画税の納税通知書

被相続人が滞納した税金の督促

空き家の管理状況についての通知

地籍調査の立ち会いの通知

相続放棄の手続きは司法書士に任せよう

専門家に任せることでミスや不備を防げる

裁判所への提出まで丸ごとサポートしてくれる

3ヶ月の期限以内に間に合うように手続きを進められる

まとめ

 

市役所で相続放棄の手続きはできる?

相続放棄は、相続人が被相続人の財産や負債を引き継がないことを法的に宣言する手続きです。市役所でできるのは、戸籍謄本や住民票などの書類取得や一般的な相談に限られ、相続放棄そのものの申述は、家庭裁判所で行う必要があります。ここでは、市役所でできないこと・できることをそれぞれ整理して解説します。

相続放棄の手続きは市役所でできない

相続放棄は、「相続人としての地位を放棄する」法的な申述行為であり、家庭裁判所がその意思を確認・受理することで効力が発生します。つまり、市役所での申請や届出では法的に認められません。市役所は行政機関であって、司法判断を下す権限を持たないため、相続放棄の申述書を受け付けたり、代行したりすることはできないのです。
相続放棄の申述は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。申述書を提出すると、家庭裁判所から「照会書」という確認書類が送付され、記入後に返送することで正式に放棄の意思が確認されます。
この流れを経て初めて、相続放棄の効力が認められる仕組みです。市役所の窓口では、相続放棄の詳細な法的手続きは扱えませんが、市役所の法律相談などを利用すれば「どの裁判所に申述すればよいか」「どの書類を用意するか」「どのような流れで進めればよいか」といった案内は受けられます。
とくに初めて相続放棄を行う方は、まず市役所の法律相談などで相談して全体像を把握することで、後の手続きをスムーズに進めやすくなります。

必要書類の取得は市役所で行う

相続放棄を行う際は、家庭裁判所に提出するための証明書類を用意しなければなりません。前述した通り、これらの書類は市役所や町村役場で取得ができます。相続放棄に必要な主な書類は、以下のとおりです。

相続放棄で必要な書類

書類名 発行場所 手数料(目安) 用途
被相続人の除籍謄本 本籍地の市区町村役場 750円前後 死亡の事実と家族関係を確認するため
被相続人の戸籍附票 本籍地の市区町村役場 300円前後 最後の住所を確認するため
申述人(相続人)の戸籍謄本 本籍地の市区町村役場 450円前後 相続関係を証明するため
被相続人の住民票の除票 最後の住所地の市区町村役場 300円前後 管轄裁判所を確認するため

これらの書類は、家庭裁判所に相続放棄を申し立てる際に必ず必要となるものです。窓口での発行のほか、郵送請求やマイナンバーカードを利用したコンビニ交付に対応している自治体もあります。発行にかかる日数は自治体によって異なり、古い戸籍をたどる場合は数日から1週間ほど要することもあります。
また、相続放棄の申述には「相続開始を知った日から3か月以内」という厳しい期限が定められています。被相続人の戸籍をすべてたどる必要がある場合、予想以上に時間がかかることもあるため、できるだけ早めに書類の取得を始めることが重要です。必要書類をすべてそろえることで、家庭裁判所への申述が円滑に行えます。

相続放棄の相談は市役所でもできる

多くの市役所では、市民向けに相続や遺言、成年後見制度などに関する無料の法律相談窓口を設けています。ここでは、相続放棄の一般的な手続きの流れ、必要書類、家庭裁判所の申述先などについて相談することが可能です。
職員が申述書の書き方を教えることはできませんが、どの部署で書類を取得すればよいか、どの書類が必要かを丁寧に案内してくれるため、初めての方にとってはよい相談先です。また、自治体によっては、弁護士や司法書士が担当する無料法律相談会を定期的に開催しており、予約すれば1回30分ほどの面談が可能な場合もあります。
また市役所では、一般的な相続放棄の流れや注意点を専門家の立場から説明してもらえます。ただし、あくまで簡易的な相談の範囲に限られるため、具体的な申述書の作成相談や提出代行までは依頼できません。
市役所の相談窓口を活用することで、全体の流れを理解しやすくなり、次に何をすべきかが明確になります。そのうえで、期限内に確実に手続きを完了させるためには、最終的に司法書士や弁護士などの専門家に依頼するのが安全です。

相続放棄をする場合の一般的な流れ

相続放棄は、被相続人の死亡を知ってから3か月以内に手続きを終える必要があるため、効率よく進めることが大切です。以下では、市役所と家庭裁判所それぞれでの手続きの順序を整理します。

必要書類を市役所で取得する

最初に行うのは、市役所で被相続人と相続人の関係を証明するための書類を揃えることです。被相続人の除籍謄本や戸籍附票又は住民票除票、申述人の戸籍謄本などが必要となります。
これらの書類を取得することで、相続関係を明確にし、家庭裁判所に正確な申述が行えます。遠方の市役所では郵送での取得となるため、早めに取り寄せを行ってください。

裁判所で相続放棄の申述を行う

必要書類をすべて揃えたら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出します。申述書は裁判所の公式サイトからダウンロードでき、郵送でも提出可能です。
提出後は家庭裁判所から「照会書」が届き、内容を確認して返送すると、審理のうえで正式に相続放棄が受理されます。受理通知書が届いた段階で、法的に相続放棄が成立します。手続きに不備があると差し戻される可能性もあるため、記載内容は慎重に確認することが大切です。
とくに、被相続人の氏名・本籍地・死亡日などに誤りがあると再提出が必要になることがあります。自分で行うのが不安な場合は、司法書士に書類作成を依頼すると安心です。

相続放棄後の注意点

相続放棄が受理されても、すぐにすべての責任が完全に消えるわけではありません。法律上、相続放棄をした人が相続財産を現に占有している場合には、「相続財産の保存義務」が一時的に残ることがあります。これは、次の相続人や相続財産清算人に財産が引き継がれるまでの間、財産が損なわれたり、第三者に損害が生じたりしないようにするためのものです。

たとえば、被相続人が住んでいた家に相続人が引き続き居住している場合や、管理している不動産がある場合には、建物が倒壊する危険がないように最低限の管理を行う必要があります。もし空き家を放置して近隣に被害が生じた場合には、保存義務を怠ったと判断されるおそれもあります。

また、相続放棄後に故人の預金を引き出したり、財産を処分したりすると、相続を承認したとみなされてしまう可能性があるため注意が必要です。

このため、相続放棄後に不動産や預金などが残っている場合は、裁判所や司法書士に確認しながら対応することが大切です。特に不動産を管理している場合には、今後どのように財産を引き継ぐのかについて検討する必要があります。財産管理の方法に不安がある場合は、専門家に相談し、適切な対応を取ることでトラブルを防ぐことができます。

なお、2023年4月の民法改正により、従来の「相続財産の管理義務」は「保存義務」に変更され、相続放棄をした人すべてに義務が残るわけではなく、相続財産を現に占有している場合に限り保存義務が生じることが明確化されました。

 

市役所で相続放棄を相談するメリット

相続放棄の手続きに不安がある場合、市役所で相談することにはいくつかメリットがあります。家庭裁判所での申述に進む前に、市役所で全体の流れや必要な書類を確認しておくと、手続きのミスを防ぐことができます。ここでは、市役所で相談する主なメリットを紹介します。

必要書類の案内を受けられる

市役所の窓口では、相続放棄の申述に必要な戸籍や住民票などの書類について、どの部署で取得できるか、どの書類が必須かを丁寧に案内してもらえます。初めて相続放棄を行う人にとって、どの書類をどこで手に入れるかは意外と分かりにくいものです。
職員に尋ねることで、書類の種類や発行方法、手数料の目安などを具体的に把握でき、無駄な手間を省くことができます。とくに、被相続人の本籍地と住所地が異なる場合など、どの市区町村に請求すべきかを確認するのに役立ちます。

手続き全体の流れが分かる

市役所では、相続放棄の基本的な流れを教えてもらえます。たとえば、「書類を取得した後は家庭裁判所に申述する」「相続放棄には3か月の期限がある」など、手続きの順序や注意点を確認できます。
これにより、どの段階で何をすべきかが明確になり、手続き全体の見通しが立ちやすくなります。自分で調べるよりも正確な情報が得られるため、時間の節約にもつながります。とくに期限管理が重要な相続放棄では、こうした初期段階の情報収集が有効です。

無料で相談できる

市役所での相続放棄の流れの相談などは、基本的に無料で相談ができます。

また、多くの自治体では、無料の法律相談窓口や市民相談コーナーを設けています。相続放棄に関する一般的な質問や流れの説明を受けることができ、弁護士や司法書士による無料相談会を定期的に実施している市もあります。
費用をかけずに専門家の意見を聞ける点は、大きなメリットです。相談時間は1回30分程度が多いですが、初めての手続きで方向性を決めるには十分です。費用面で不安がある人でも安心して利用できます。

他の手続きも同時に確認できる

相続放棄以外にも、死亡届の提出、火葬許可証の申請、年金・保険・税金関係の手続きなど、死亡に伴う行政手続きは数多くあります。市役所ではこれらの関連手続きについても案内してもらえるため、一度の訪問で複数の用件を済ませることができます。
相続放棄の書類を取りに行った際に、併せて故人名義の国民健康保険や介護保険の脱退手続きなどを確認できるのは大きなメリットです。こうした効率的な情報収集は、手続きの重複や漏れを防ぎ、精神的な負担の軽減にもつながります。

市役所で相続放棄を相談するデメリット

一方で、市役所の相談には限界もあります。あくまで行政手続きの案内であり、法的判断や個別事情に基づく助言までは対応できません。以下では、市役所に相談する際に知っておきたい注意点を解説します。

専門的な法律相談はできない

市役所の窓口では、職員が法的な判断や相続リスクの分析を行うことはできません。借金の有無や遺産の分け方など、個別の事情に応じた判断が必要な内容は弁護士などの専門家でなければ対応できません。
また、市役所ではその場で相続放棄申述書を作成してもらえず、記入例や提出方法などの具体的なサポートは行っていません。市役所での相談は、あくまで「一般的な流れの案内」までと理解しておく必要があります。

書類取得以外の支援は限られる

市役所でできるのは、戸籍や住民票、除籍謄本などの書類の発行と手続き方法の説明にとどまります。申述書の作成や提出の代行、提出後のフォローアップなどは一切行っていません。
そのため、必要書類を取得したあとは自分で家庭裁判所に申述書を作成・提出する必要があります。市役所での案内は手続きの第一歩として有効ですが、実際の申述作業は専門家に依頼したほうが確実です。

待ち時間や手続きが混雑する場合がある

市役所の窓口は平日の日中しか開いておらず、混雑する時間帯には相談や書類発行に時間がかかることがあります。とくに年度末や連休前後は来庁者が集中し、受付までに1時間以上かかる場合もあります。
事前に市役所のウェブサイトで混雑状況を確認したり、予約制の相談窓口を活用したりすることで、時間を無駄にせずに済みます。急ぎで相続放棄の準備を進めたい場合は、窓口対応に時間を取られないようスケジュールを調整することが大切です。

相続放棄後に市役所から届く可能性のある書類について

相続放棄を行っても、一定期間、市役所から故人(被相続人)に関する通知や書類が届く場合があります。ここでは、届きやすい書類の種類と、それぞれの対処法について解説します。

固定資産税・都市計画税の納税通知書

相続放棄をしても、被相続人名義の土地や建物が残っている場合、市役所から固定資産税や都市計画税の納税通知書が届くことがあります。これは、市役所が登記簿上の名義人に一律で送付しているものであり、放棄済みの相続人に責任が発生するわけではありません。
通知書を受け取った場合は、まず家庭裁判所から発行された「相続放棄受理証明書」または「受理通知書」のコピーを用意し、市役所の資産税課など担当部署に提出して、相続放棄が受理済みであることを伝えましょう。郵送での対応も可能です。
また、放置しておくと督促状や催告書が再度届く可能性があります。受け取った時点で早めに連絡することで、不要なトラブルを防げます。

被相続人が滞納した税金の督促

被相続人が、生前に滞納していた住民税や国民健康保険料、介護保険料などの督促が届く場合があります。これも、税務システムの処理による自動送付であり、相続放棄が成立していれば支払う義務はありません。
滞納の知らせが届いた場合、納税通知書と同様に相続放棄受理証明書のコピーを添付して、担当部署に説明してください。相続放棄が正式に受理されていれば、督促は停止されます。
なお、相続放棄の前に督促が届いた場合は、放棄が成立するまで支払い義務が残る場合もあるため注意が必要です。また、誤って税金を支払うと「相続財産を承認した」とみなされるおそれがあるため、支払い前に必ず司法書士など専門家に相談するのが安全です。

空き家の管理状況についての通知

被相続人が、所有していた不動産が空き家になっている場合、市役所から「空き家の管理状況確認」や「立入調査の案内」が届くことがあります。これは、空き家対策特別措置法に基づく行政手続きであり、放棄した相続人に直接的な義務が課されるものではありません。
しかし、相続放棄後でも相続財産を現に占有している場合は、次の相続人が決まるまでの間は、一定の「相続財産の保存義務」が残ることがあります。空き家を放置して倒壊や不法侵入などの被害が起きないよう、最低限の管理を行う必要があります。
通知が届いた場合は、相続放棄受理証明書を提示して市役所に放棄済みである旨を伝えましょう。必要に応じて、司法書士や家庭裁判所に相談し、適切な管理方法を確認しておくと安心です。

地籍調査の立ち会いの通知

市町村が行う地籍調査の対象地に被相続人名義の土地が含まれている場合、立ち会いのお願いや調査日程の案内などが送付されることがあります。これも登記簿上の所有者が、被相続人のままになっているため自動的に送られているものです。
相続放棄をしている場合、相続人に立ち会いの義務はありません。通知を受け取ったら、家庭裁判所の受理証明書の写しを添えて、市役所の地籍調査担当課に「相続放棄済みである」旨を連絡すれば対応は不要です。
次の相続人がまだ確定していない場合、通知が繰り返し届く場合は、司法書士に相談して適切な手続きを確認するのがよいでしょう。こうした通知は、放棄後も一時的に届くことがありますが、正しく対応すれば問題になることはありません。

相続放棄の手続きは司法書士に任せよう

相続放棄は、書類の準備や裁判所への提出など、専門的な知識を必要とする手続きです。「市役所でできると思っていた」という人も多いですが、実際の申述は家庭裁判所で行わなければなりません。司法書士に依頼することで、期限内に確実かつ正確に進めることができます。

専門家に任せることでミスや不備を防げる

司法書士は相続放棄の実務に精通しており、申述書の作成や必要書類の収集を正確に行ってくれます。自分で行う場合によくある記入漏れや添付書類の不備を防ぐことができ、家庭裁判所での受理までスムーズに進みます。
相続放棄は一度でも不備があると差し戻しになる可能性があるため、専門家のサポートは非常に有効です。短い期限内で確実に終えたい方には、司法書士への依頼が最適です。

裁判所への提出まで丸ごとサポートしてくれる

司法書士に依頼すれば、申述書の作成だけでなく、家庭裁判所への提出や照会書への対応までを一括で依頼できます。申述人本人が裁判所に行く必要がないケースも多く、郵送で完結できるのが大きなメリットです。
また、提出後の確認や受理通知書の取得もサポートしてくれるため、初めての人でも安心して進められます。忙しい方や遠方に住む相続人にも利用しやすい方法です。

3ヶ月の期限以内に間に合うように手続きを進められる

相続放棄には「相続が発生したことを知った日から3か月以内」という厳しい期限があります。期限を過ぎてしまうと、相続を承認したとみなされる場合もあり、借金などの負債まで引き継いでしまう危険があります。
司法書士に依頼すれば、スケジュール管理から必要書類の準備、申述書の提出までをスピーディーに進めてくれるため、期限を守って確実に相続放棄を完了させることができます。相続放棄の経験豊富な司法書士事務所であれば、状況に応じて最適な進め方を提案してもらえる点も安心です。
相続放棄の手続きに不安がある方は、大阪相続相談センターでも無料相談が可能です。経験豊富な司法書士が一人ひとりの状況に合わせて丁寧にサポートし、期限内の確実な手続きをお手伝いします。

まとめ

相続放棄を行っても、市役所から固定資産税や空き家関連の通知が届くことがありますが、ほとんどの場合はシステム上の処理によるもので、支払い義務は発生しません。相続放棄済みであることを伝えれば、適切に対応してもらえます。
ただし、相続放棄は期限が短く、手続きに不備があるとやり直しになるリスクもあります。確実に進めるためには、司法書士に相談し、専門的なサポートを受けることをおすすめします。